「普通に彼女を作る」ことの一つのハードル
ぼくのそもそものナンパの目的は、両想いになれる彼女を作ることだった。
だから、ナンパが恋愛の逆を行くものだとわかるとナンパでの彼女作りは一旦諦め、
大学生らしくサークルとバイトに精を出しそこで彼女を作ることを目指した。
サークルを続けてきたおかげで周りにいたモテるリア充の振る舞いを間近で見ることができ、
もちろん場面によるがリア充っぽい振る舞いは少しは板につくようになってきた。
コミュニケーションも、一対一や仲の良い集まりならあたかもリア充であるかのごとく軽いものと化していた。
そして男子校出身の惚れっぽさも加わり、バイト先にあっさり気になる子もできた。
あとは攻めるだけである。
ぼくの当初の予想では、同期としてさくっとみんなで仲良くなり、さくっと二人で会うようになり、さくっと彼女化している、はずだった。
はずだった。。。
ところがどういったことだろう、彼女と二人で帰るはずだった帰り道は、今日も一人ぼっちなのであった。
気になるあの子は先輩方と歓談中だ。
バイトをはじめて数ヶ月、ぼくは未だにコミュニティに居場所を見いだせないでいた。
モテるためにリア充ぶってみて、女の子や先輩や同期一人一人との一対一ではそのようにぶることができても、コミュニティ内でのリア充な後輩としての振る舞い方を、ぼくは知らなかった。
なるほど、モテるあいつが女の子に接するところは観察していても、先輩への厚顔無恥な対応など参考にする気がなく見逃していた。どのように接すればあのように親しく対応できるのか、ぼくは知らない。
そうして人の輪に入れないまま、後輩の女の子としてコミュニティに馴染んでいくあの子との距離はどんどん開いていく気がした。
多くの女の子にとって、恋愛や結婚はみんなに祝福されたいものだと聞く。
だとしたら、自分が「みんなの祝福」に値しない人間なら、理想には届き得ないのではないか。
恋愛したかっただけのはずが、組織で生き抜く術みたいな仰々しく自分の嫌っていたものまで越えなければならなくなるとは、
恋愛、ハードル高すぎだろと。
あまりの届かなさに悶々としながら、
あの子への距離に絶望しながら、
ぼんやりと夜更かしする夏。